送り火
はな 

なすときゅうりの馬なんて
のれないよねえ とつぶやいたとき
お兄ちゃんは
ひらたくて少し冷たい手のひらで
あたしの手を
つかんでいた


じいん と鳴る
すずしいかぜに 



あなたからのでんわは
たあいのない約束のつづきで 
いつのまにか みみに貝がらをあてていた
朝だった

台所には
せわしない ありの行列と
ななめの笊
たまに しずかなあしおとがする



くちのなかで
何度もくりかえしたことばを
ざらざらした
ぬくもりを
たしかめるように そっと、
噛んだり していると
おばさんはあたしをせっけんのあわみたいに
ごしごしやっては
はやく支度しなさいと言い 
音をたてて
水をながす


らせんかいだんをのぼってゆく
ゆめ のように
そらはてっぺんへ どこまでもすきとおる


自由詩 送り火 Copyright はな  2005-07-14 01:15:56
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