多少成長した孤児の方法
黒川排除 (oldsoup)

妄執の日々
愚弄かつて
家族が失った苦しみ
他の誰かが抱く
鉄よりも冷たい
透明な角材
緊張に彩られた
角形のビーカーに
半分ぐらい水を張り
一気に墨汁を流したような
暗い部屋
誰もいない部屋で
椅子の足がひとのような叫び声をあげ
マルチタップのプラグが
何も刺されていないような
陵辱の場面
このあと打ち付ける予定の
バケツ一杯の塗料
引きずって振り回す
午前中を失ったまま
今でも通じている
更新の記録
は取られている日中の
無線通信のパートタイマー
再び椅子
机 空の容器 皿
カトラリーの使い方を覚えたばかりの指
机の上に置かれた静かな
紙の上に書かれた静かな
文字をたどることもできず 指
もう帰りません
の筆記を丸く指で囲んで
対話は要求されていない

食感はもの足りず
おなかがすきましたよお母さん!
と言って机を叩けば
冷蔵庫から水が溢れ
そのまま屋外まで投げ飛ばされる
そうか
ここは二十六階だったか
ありふれた疑問
二十五階は雨漏りで困惑
二十四階は揺れを感じ
二十三階は新婚夫婦で
二十二階は真っ最中
二十一階
窓の外を指差して
あれがあなたのお母さんです
初めまして
よろしくね
遅すぎる晩餐
第三者の介在に
ようやく気付き
かれ
何も言わず


自由詩 多少成長した孤児の方法 Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2005-07-14 00:49:02
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