銀領歌
木立 悟




朝が近づき
朝が持ち去る
行方の見えない道をゆく
朝に現われ
朝に消える
直ぐにかすんだ道をゆく


明るい雨のなかをすぎ
銀に鋳られた道をゆく
歌を見つめ
空を見つめ
走りつづけ
銀を削り
足もとの息に
銀をまぶす


晴れと雨の合い間合い間に
けむる道は増えてゆく
すべてを受け入れることができずに
あふれ出たものに濡れながら
やわらかくふるえる布の道
水に水に紡がれる道


空気の染みをひとつひとつ呼吸し
置き去られることのない約束を見る
銀の心 光のうつぶせ
雨のなかの緑の稜線
朝と午後を生む羽に
触れては離れ 触れてゆく


轍の横を
濡れた素足がすぎてゆく
音はわずかに浮かんで響き
影の交差するところから
濡れた背中を見つめている
足跡の色
朝の色
雨と原を分けるかすかな
かすかな歌を見つめている








自由詩 銀領歌 Copyright 木立 悟 2005-07-07 14:01:14
notebook Home 戻る  過去 未来