傾いた景色
捨て彦

固まる。
人々の微笑み。
固まる。固まっている夕景。
人々の微笑み。とうの昔に固まっている。
夕景。人々の微笑み。
微笑みはとうの昔に固まってしまった。
固まる夕景。
乾いた風。
固まる夕景、乾いた風。
空気感。
いつか固まってしまった街並。
夕景。空気、空気。
空気。
空気は乾いている。空気はすでに乾いている。
空気はすでに乾いているんだよあのさぁ、
なんつーか俺は今この場所から脱出したいと思っていて
まッ逆さまにささくれだったビルの屋上からずうーっと
無責任な軌道を描いて落ちるいわゆる
人間生活の忠実な模写なんだけれどもたとえばそれは
どんなに無視しようと思っても目をそらすことの出来ない
何気ない自然現象みたいなものでだからさ無理しなくていいんだよ
あんたが目をそらせなくても負い目なんて感じなくていいんだ
この場所は続いていくんだ仕方なしにこの場所は
こり固まったまま続いていくんだワケなんて
知らなくていいよ知らなくてもいいんだよそれはあんたの
知ったこっちゃないのさそれにしてもさぁ。





夕景。





剥がれ落ちる。
風がコンクリートの放射を取り巻いた。
剥がれ落ちる。
目が見えない上に両腕も千切られて
風がコンクリートの放射を取り巻いた。
剥がれ落ちる。
黒いヘド色の海に
花束が次々と投げ捨てられてゆく。





視線は赤く染まった鳥に乗せる。





自由詩 傾いた景色 Copyright 捨て彦 2005-07-03 00:16:17
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