形なきものにかたちを与えるように
渡邉建志
定型に望みを賭ける
形なきものにかたちを与えるように
カメラ無し三脚立てて五歩下がり
瞼が切り取る秋の夕暮れ
君のこと好きで好きで気が狂いそう
君の字に宿る君のたましい
「後ろから抱きつく私は誰でしょう」
「短歌タンか!短歌タンだね!」
夜のバスガールと高速走るバス
カーテンはくらく締められたまま
スカボローフェアに君も行きますか
悲しくなるからきっと行かない
手をとって歩いた土地を再訪す
至るところに見える人影
遠いと言い放て 遠い
小さく、痰を吐き捨てるように
悲しいので君に会いたくありません
桜が散って夏が来るまで
溶けていく緑の魚が溶けていく
脈打ちながら、脈打ちながら、
何事を為したいか分からず
友人の背中ばかりが遠のいていく
簡単な問いを繰り返す季節です
なぜ生きるのかなぜ生きるのか
朝 ドアを出て行くような気軽さで
窓から出て行けそうな気がした