風も木も滅びゆくときわれもまた等しく愛に抱かれて過ぎよ
降りしきる雨でおまえの声は途切 れ遠い異国である公衆電話
たった今、落ちた花びらだけ見えたった今見えなくなったただ風だけの原
MEDIUM(4)
Bすらも幼稚園児にばらまかれ描ききれない空のすみずみ
ふたりしてト音記号の真似をする恋人たちの戦争前夜
灰色の未練
手紙なら燃やしてしまえ燃えぬまま終わりし恋に追伸は無し
抜け殻としての鏡やアイライナー残してあなたも楽園を去る
金魚を飲み込んでしまったので下腹部を切り裂くと真っ赤な金魚たちが勢いよくあふれ出した
懐古主義的発想への転換
赤い風鈴が欲しいのだがそれは絶対に叶わないことであることを僕は知っている
重度の仮病
甘過ぎる咳止め飲んでマスクメロン抱えて眠る夏風邪の夜
美しい姿に見惚れ血圧が高いですねと言われる病室
神様が与えてくれし機会をも投げ出す無神論者の失恋
陰影礼讃
影そしてそのまた影の影を生むひかりのひかりのひかりの反射
射反のりかひのりかひのりかひむ生を影の影たまのそてしそ影
雨の降らない六月
その船は悲しみ行きでありました水の無い月みたいな国へ
第八楽章
携帯の目覚まし鳴っても気付かない音楽会の夢を見ている
最大の音を探して様々なものを破壊す打楽器奏者
たとえ与えられてもわたくしはひとつをあきらめた者であるのです
回転する満開のカッティングレーズン
暑き夜に捧げる犠牲としてのわれの睡眠時間と肉体と汗
マルボロライト
息継ぎとしての喫煙くりかえす失われてゆく世界の部屋で
G
重力をひとつの罰だと仮定して踏み出す一歩が増やしゆく罪
ゆるやかな傾斜をわれは自転車のブレーキかけづに黄泉の国まで