母の人生のめぐり合わせ
野島せりか

父との離婚から、
三度目の春が過ぎて
夏が訪れる頃それは始まった

母は男とお酒を飲んだ
ずいぶん前からの知り合い?
まったくちがう世界の男
またしても背の低い男
でも 仕事にはやり手の男
本もたくさん読んだのね
父とはちがって頭の良い男
母は気取っていた

まだ子供だった私は
泣きそうになる気持ちを押し殺して背を向けた
あまりの皮肉に父を恋しがった

かわいそうな母
手を焼かせてしまったね
一晩だって家をあけられず
仕事もして 
食事もつくってやらなければならなかった
素直になれるのは日記の中だけ
夜中に1人で泣いた時だけ
愛の悩み?それとも別の悩み?

男と二人食事をして 
お酒を飲んで テレビを見た。
そして月に何度かはベッドを共にした

男は私に言った
母の事が「本当に好きだ」と・・・
母はこれで幸せだと思うの?
色々な事をしたけれど
結婚して一緒に暮らすことはなかった

私が許さなかったから?
私が男を試したから?

結果は私の思った通り
とにかく男は妻に隠れて浮気をしたのだ
別の女をたしなめて
男が捨てた女はただ一人
私の母だけ

母にはもっとましな男がふさわしかった


自由詩 母の人生のめぐり合わせ Copyright 野島せりか 2003-07-01 22:37:11
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