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藤原 実

雷(らい)のあとの雲が 鏡のなかに入って 雨を降らしたので
鏡のなかから びしょぬれの少女が飛び出してきた

ぼくはタオルと熱い紅茶と古いジャズを少女のために用意した
YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO --------

鏡のなかの青空を切りとって破片をグラスに入れると
ソーダー水のように泡立つモノローグ

ストローをくわえたくちで

  要約してね・・・要約してね・・・

と少女はいう

  はやくしないと 香水瓶のなかの猫が
  けむりになっちゃうよ

まさか! とおもって引き出しをあけたら
鏡のわれる音がした

透明な猫が窓ガラスにもぐり込もうとしている
しっぽをつかんで ひっぱりだそう としたとき
不意に 夏の海が我が家を襲った


自由詩 Visitors Copyright 藤原 実 2005-06-17 23:13:33
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