世界のはじっこの台所
うめバア

あなたがいなくなって
正直
ずいぶん楽になったなと
思います。

もう、泣いたりわめいたり
行かないでくれとすがったり
不条理にいらだったり
そんなことをしないで済む分
ずいぶん、楽になりました

新しい発見も、ずいぶんありました
角の魚やさんが、新鮮で美味しいことや
駅前のスーパーで
牛乳パックの再利用を行っていること
第三日曜日の朝市はとびきり安いこと
夕方の家々から漂う晩ご飯の匂い
あなたから何か言ってくるんじゃないかと
待ちかまえたりせずに
弛緩したまま、テレビを見ていられる夜の
長くてのどかなこと
虚しさのただ中でも
めくるめく、季節とか

関係者各位に
葉書をだしても良いくらいです
恋や、愛について語っていた頃の
あの頃のわたしは
死にました、と

今、ここにいるのは
小さな部屋に暮らす
平凡でつまらない
年老いていく途中の女

ビールを1本買って
さんまの焼いたのと
豆腐のお味噌汁と、
胡瓜ときくらげのおひたしを作ろう
誰のためでもない
私のために
世界のはじっこの、台所で


自由詩 世界のはじっこの台所 Copyright うめバア 2005-06-11 22:12:37
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