紫陽花が咲く頃に
ベンジャミン

あなたの白いスカートが
ひととき夏色に見えたのは
うすぐもりの雲の切れ間から
気まぐれに顔を出した
あの眩しい日差しのせいではなく
あれはそう
道をさえぎるようにもたれかかる紫陽花に
語りかけるようなあなたの姿が
まるで景色の一部のように思えた
錯覚のような
それでいて
確かな記憶に残る
別の眩しさのせいでした


六月は
そんな淡い想いをにじませる青色で
あなたは紫陽花に寄り添って
ひとつひとつの花びらを
めくるように見つめていました
梅雨ですから
重たい空がたえきれずにこぼす
雨粒にたたかれてしまえば
余計な悲しみまで感じてしまうのはもう
仕方のないことですね
紫陽花は
その花色に美しさだけを浮かべているようでも
世間の水の酸っぱさを吸いこむほどに
色を増してゆくと知っている
あなたは
ひとつひとつの花びらの
そんな静かな声を受けとめながら
けれど
悲しくこたえることもなくただ
きれいと
微笑み呟くのでした


降り続く雨が
たとえ悲しみに満ちているとしても
そんな淋しさに手を差しのべて
それにさよならをするように花びらをゆらす
あなたは
だからこんなに
きれいでいられるのですね

やがて散る紫陽花と
そのまま咲き続けるあなたを見比べれば
打たれ弱い私でも
まだまだ頑張れそうな気がして
それをどうにか伝えたかったのですが
私もただ

きれいだねと
微笑み呟くのが精一杯でした

     


自由詩 紫陽花が咲く頃に Copyright ベンジャミン 2005-06-11 12:58:24縦
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