着地点
霜天
残していったものが
背中でまだ疼いている
一日の始まり
蝶のような揺らめきで飛び立っていったのは
形にならない荷物を抱えた人
遠くへと呼びかけた
朝の挨拶をすり抜けて
ここで何かを捨てるとして
私から何が剥がれるだろう
重すぎる体は意外と沈まないもので
脱ぎ捨てなさい、と
誰かが言う
夕暮れ、夕闇、カーテンの落下
ぼんやりと霞む夜は遠くまで透けて
見上げる黒は深い深い密度
手を伸ばせばきっと触れることのできる静寂
その手触りを、伝えたくなる
新しく拾ったものの代わりに
靴を脱ぎ捨てる
背負った鞄から紙飛行機を取り出して、投げる
街灯を越えて、夜の縁を越えて、その先は、見えない
着地するすべて、私のそこは遠くない場所で
伝えたいことがある
そのために、またひとつを脱ぎ捨てる
着地点、その場所へ
脱ぎ捨てなさい、その言葉に頷いて
ゆっくりと、沈み込む