あった。
鳥憑
話したいことがたくさんあった。
話したいことが、たくさんあったんだ。
雪がいつかは溶けてしまうことすら
忘れてしまうほどに たくさん
話したいことがあったんだ。
どうすれば、この世界を愛せたのか。
カラスが 夕空を横切っている。
もう無限に飛んで行くのかと思わせるほどに
寄りそっていた。
ああならば、さびしくないね。
ああなることが、完成なのだろうね。
カラスは完成したのだ。
ただ一羽だけが、夕暮れのなか 太陽を
追いかけたまま 沈んでいったけれど、
カラスたちは幸福となった。
ただ一拍だけ 群れの動きを 忘れて 光の
光のほうへ 光が あると思われるほうへ
沈むだなんて、わからずに ともに落ちたら
夜を憂いた。
静かな一拍の呼吸が
なにより 素直である。
人類には防ぎようのない暑さがあったけど
カラスたちは知っていたと思う。
ぼくらは熱心に ぼくらに伝わるだけの考えを極めているから
カラスは 伝えることも諦めたのかもしれない。
誰にも伝えられない 光の美しさがあった。
上を向いたなら 悲しみが止むと 振り子みたいな 規則はない。
上を向いたなら 空があるかも 灰色の雲 練ったみたいな
年をまたいでも まだ続いた。
カラスの方がよっぽど 綺麗。
話したいことがたくさんあった。
陽と共に落ちたのなら 雪は積もってないのだろうね。
陽を追いかけたことが 幸せだったのなら
世界を愛せるのかもしれないね。
そんな二択ではおさまらなかったから、
話したいことが、たくさんあったんだ。