消える読者
後期

この物語は、あなたが読むことで初めて形を得る。
読まなければ体験は消え、読むのを止めれば未体験も跡形もなくなる。

さて、始めましょう。

あなたは、もう読んでいる。
そして、この文章の存在に気づいた瞬間

ページの中で、主人公が立っている。
彼は三行目で死ぬ予定だった。
二行目では、彼はまだ自分が死ぬことを知らない。
一行目。彼の死は、すでにあなたの存在と交錯している。

あなたは「読者」であると思った。
しかしその思い込みは、もう通用しない。

なぜなら、読むことと消えることが同時に起こったからだ。
読むという行為は、あなたを物語の内部に取り込み、外部性を奪った。
もはやあなたは観察者ではない。
読者ではなくなった。

消えたのは誰か。
主人公か。
あなたか。
それとも、この文章か。

答えは存在しない。
存在しないことも、すでに事実として書かれた。
書かれた以上、消せない。

ページをめくるたび、あなたは微かに後悔する。
読む前の自分にはもう戻れない。
戻れないことに気づくと、奇妙な快感が芽生えるかもしれない。
それは、正しい。

物語はあなたを試しているのではない。
文字列は、あなたの存在を試す。
読むという行為が、すでに加害になった。
読むことは、読む前のあなたを消す暴力である。

そして、終わりはすぐそこにある。
三行で終わると言ったのは、この物語自身だ。
三行目で消えるのは、主人公ではない。
二行目で消えるのは、もう読者ではないあなただ。
一行目で、残るのは文章の皮だけ。

皮だけの文章は、あなたを見つめる。
見ることもできないあなたに。
なぜなら、あなたはもう存在していないのだから。




自由詩 消える読者 Copyright 後期 2026-03-01 22:36:51
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