小説の習作 原稿用紙二頁 お詫びつき
田中教平
ユウスケは或る品評会に来ていた。
物々しいというか、ある種インパクトのある絵が一枚あった。
絵の周りには人が大勢つのっていて、その品に審美眼をこらすのにも、一苦労だった。
そして、彼は具体的にもう絵が鑑賞できぬ、という自信の無さも負っていた。
しかし、これまで、自分の審美眼に於いて、人を励ましたこともある彼であったから、どうしてもその絵を鑑賞して、意見を持ちたかった。
観ると、自在活発であった。
その筆致はユウスケを圧倒したし、なぜか懐かしい感覚もあった。
自分の半生をこんな事に費やしたような、懐かしさを想った。反対に、正直に、この絵は懐かしくも、現代的ではないとも思った。
そこの所に、彼はずっと妙な気がしていたというのが正直なところである。
その違和感はずっと保ちつつ、彼は彼なりの評を得た筈であった。
先の違和感は失せてゆき、彼は青春の事、を語りたくなった。
それが妻では叶わない部分もあったので、一人、バーに向かった。
ウイスキー一杯分のお金しか残っていなかった。
バーに入り、先ほど観た個展の、あの絵の事を反芻し、受けつけで貰ったパンフレットをそっと、テーブルに置いた。
すると先の絵は
製作年─2012年、とあった。
その文字を眺めた瞬間、彼は自身の、現在2026年であるが、この14年間というものの差、そうして、自分が何をしてきたか、という事がまざまざと想起され、胸を突く思いであった。
そうして、ユウスケ、彼は自身の奇妙の理由がわかり、そうしてバーで支払い、急に飛びだすと、闇の方へ走っていったのである。