難解な宿題
後期
難解な宿題だと?
そんなものは最初から燃えている。机の上で、白い顔をして、しかし内部では火薬のようにくすぶっている。
題は知らない。
問いはいつも遅刻してくる。
答えはすでに血の中にある。
「理性について論ぜよ」と書いてあるなら、笑ってしまえ。理性は朝焼けに溶ける砂糖だ。舌に残るのは、ただの焦げた甘さだ。
ぼくは椅子を蹴る。
窓を開ける。
風が紙を攫おうとする。いいぞ、攫え。
問いなど空へ放て。
文字は整列を拒む。
五十音は酔っぱらい、ひらがなは裂け、漢字は歯をむく。
ノートの罫線は牢獄だ。
ぼくはそこに従順に並ぶ政治犯ではない。
難解?
世界そのものが難解だ。
昼は刃、夜は黒い蜜。
血管を流れる星々が、理屈を嘲笑う。
ぼくは書く。
「私は別の場所にいる。」
ここではない。
教室でもない。
採点表の中でもない。
言葉は爆ぜる。
インクは稲妻だ。
意味は後から追いかけてくる犬のように息を切らす。
宿題とは、魂に首輪をつける儀式だ。
だが首輪は錆びる。
ぼくはそれを噛み切る。
紙は震えている。
いや、震えているのはぼくの手だ。
震えは恥ではない。震えは出発だ。
提出期限?
明日?
明日はまだ発明されていない。
ぼくは最後に一行、斜めに書く。
「答えは、逃走の速度である。」
そして紙を折る。
鳥の外へ。
窓の形に投げる。
難解な宿題は、空でほどける。
白い破片となって、都市の上に降る。