【ルシファー】「明けの明星」が「悪魔」になった理由
愚零子

ああ、お前は天から落ちた
明けの明星、曙の子よ。
お前は地に投げ落ちされた
もろもろの国を倒した者よ。
かつて、お前は心に思った。
「わたしは天に上り
 玉座を神の星よりも高く据え
 神々の集う北の果ての山に座し
 雲の頂に登って
 いと高き者のようになろう」と。
しかし、お前は陰府におとされた
墓穴の底に。
       (イザヤ書)


この詩文は、現在のキリスト教視点において「ルシファー(悪魔/サタン)の没落を記したもの」とされています。


でも、私にはわからない。

なぜこの詩文が、「=ルシファー」となるのか?
「もろもろの国を倒した」のはバビロン王であって、ルシファーは「もろもろの国を倒してはいない」のではないか?
たとえ、ルシファーが国や人の心に悪を与える存在だとしても、それは「堕天してから」のことであって、そういうことをしたから天から落とされたわけではないのでは?
「神への反逆」は「もろもろの国を倒す」とは異なるのでは?
そもそも、ルシファーとは本当に悪魔(という存在・概念)なのか?

ルシファーについて一通り最後まで読み、大体のディティールは掴めた。
けれど、どうしても初っ端に掲載されていたこの詩文に違和感がある。
違和感が強すぎて思考が完全に停止、先に進めなくなってしまった。

なので、この詩文について深掘りしてみた結果、一つの結論と着地点に行き着けたので、ここに残そうと思います。
(頭の良くない私が後に読んでも明らかに理解できるよう、イメージとして一気に走ります)



紀元前8世紀頃。
預言者(神の言葉の代弁者)であるイザヤさんが、当時のバビロニア王(周囲の国を征服・支配しまくった王)への皮肉を言った。
「今威張っているバビロン王も、いつか明けの明星が消えるように没落するぞ」

このイザヤさんの様々な言葉が記録されたものが「イザヤ書」。


で、紀元前5世紀頃。
国を失いかけていたユダヤ人。
その学者たちが、自分たちのアイデンティティを守るために、モーセやイザヤたちの言葉や歴史の記録を一つにまとめた。

これが「旧約聖書」。



で、紀元1世紀、キリストが誕生。
イエス・キリストが「そういえば、サタンが天から落ちるのを見たよ」と発言。
それが福音書(イエスの教えなどを記録したもの)に記録される。



で、4世紀。
とある学者(聖ヒロエニムス)が聖書(旧約+新約)を、ヘブライ語からラテン語に翻訳。

この時に、ヘブライ語で「ヘレル(輝く者)」だった言葉が、ラテン語で「明けの明星」を指す『Lucifer(ルシファー)』と訳された。



で、4世紀~中世にかけて、
キリスト教の教父たちによって再解釈された。

「旧約聖書の『イザヤ書』に、天から落ちる者の記述があるぞ!」

「新約聖書でイエスが『サタンが天から落ちるのを見た』と言ってる!」

「ということは…イザヤが書いた『明けの明星(ルシファー)』って、サタンが堕天する前の名前だったんじゃね!?人間の王のことじゃなく、悪魔の正体のことだったんだ!」

勝手なドッキング解釈の完成。

そして、この解釈が公式設定とされて広まった。

その結果、
「ルシファー=堕天使の名前(神を超えようとする傲慢)」として定着。





つまり、預言者イザヤが「えっと、そういうことなんです。」と言ったわけではない。

後世のキリスト教の教父たちが「勝手な造作をした」だけ。


そもそも「Lucifer(ルシファー)」という言葉自体、
ラテン語で「光(lux)」を「もたらす者(-fer)」。
つまり、明けの明星(金星)を指す一般名詞に過ぎない。

それを「悪魔の固有名詞」に塗り替えてしまった教父(人間)たちの解釈力。




【ルシファー】
・・・神を超えようとする傲慢・・・




キリスト教が最大の敵とするサタン(悪魔/ルシファー)は、自由意志で神に背き、天から堕とされた。

教父たちもまた、自由意志で神の言葉を「自分たちの物語」へ叩き落した。


ルシファーを堕としたのが『自由意志』、
ルシファーという悪魔を創り出したのもまた、人間の『自由意志』。



“神の意志”を「自分たちの都合」で勝手に私物化!!

なんという、凄まじいほどの「自由意志」!!

誰よりもルシファー的!!!






私が感じた違和感の正体。

それは「もろもろの国を倒した」という生々しい人間の王への記述を、無理やり「概念としての悪魔」に紐付けた際の「ズレ」。



「人間のやったことだから、矛盾も違和感もあって当たり前」


ここに辿り着き、私の思考停止は解けました。





言葉の意味は時代とともに変わる。

人を介するほど、本質は加工されていく。



信じて良いのは、解釈が混じる前の「第一次情報」。

そして、その矛盾を嗅ぎ取った「自分の直感」だけ。

(私の得たこの知識が第三次情報であることは、秘匿すべき真実である…♡)





【悪魔】とは。




「神に背いた者」ではなく、
『独自の解釈(意志)を持ち始めた者』に貼られる、
「ただのレッテル」に過ぎないのかもしれません。




さて。
あなたはこの「自由意志」を、如何にして使いこなすか。




散文(批評随筆小説等) 【ルシファー】「明けの明星」が「悪魔」になった理由 Copyright 愚零子 2026-02-20 16:16:52
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