頬の記憶
花野誉


お風呂の洗い場
洗顔し、顔を上げる

湯気の向こう
鏡に映る私

かすんで
皺もシミも見えない

そのせいか
若やいで見える

お風呂の鏡は
これだから好き

頬を触れば
濡れて しっとり

──若い頃はこんなだったかな

私の頬に
触れた人たちを
思い浮かべる

なんだか 照れくさい

今の私の頬を
愛おしげに触る人は 
さすがにいない

そう思えば

触れてくれた人たち
彼らの手の温み
やさしい視線

今一度
頬に手をそえてみる














自由詩 頬の記憶 Copyright 花野誉 2026-02-20 14:40:33
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