LGBTIQの詩人たちの英詩翻訳 しょの3
田中宏輔2
シェリル・デュメズニル
選ばれたのよ
埃と枯れ葉が、サッカー競技場を横切って舞い上がる、
信号灯の光が、競技場のポールに跳ね返り、
吹きつける風が、突然、涼しく感じられる。
窓ガラスを上げて、物干し綱から掛け布団をぐいっと引っ張り抜くように
やや乱暴に、公園のなかに車を乗り入れ、ドライブウェイを素早く走らせる。
以前にも、それがやってくるのを目にしたことがあった──
煙霧がうねりながら丘を越え、あたしたちのほうへと這うようにしてやってくるのを。
網戸はぴったりと縁まで付けられていて、
そこには、ベッドの上で身体を丸めて、あたしを待っている彼女の姿があった。
彼女が六歳だったとき、彼女の両親が、
世界は、こんなふうにして終わるだろうよと話した──
いかめしいケダモノが空いっぱいにその翼をひろげて舞うと、
雷が窓ガラスをガタガタ言わせるだろうと。
彼女の父親は毛布を集め、瓶詰めの水を蓄え
自分のベッドの下に、缶詰の豆を蓄えておいた。
彼は、彼女のランチボックスのなかに聖クリストファーのメダルを隠して
彼女を学校にやるときには、
彼女の首のまわりに肩衣の擦り切れた撚り糸を掛けさせたのだった。
彼は彼女に言った。
「世界の終わりがくると、そいつが閃光のようにして現われるだろう。
おまえは窓から離れなきゃいかん。
ただ選ばれた者だけが救われるだろうよ。」と。
あたしは掛け布団を床の上に落とす。
そして、彼女のそばに身を横たえ、
彼女の襟元から彼女の髪の毛をさっとなで上げ、
その汗で湿った首筋にキッスする。
雷が鳴り響いた。さいしょの白い稲妻が走った。
あたしは、彼女のシャツの下に手をすべらせ
彼女の身体を抱きしめる。
そうよ、あたしたちは、選ばれたのよ、救われたのよ。