LGBTIQの詩人たちの英詩翻訳 しょの2
田中宏輔2
ラファエル・カンポ
聖母子
月経がとまって、お母さんがなくしちゃったのは、
女性ホルモンだけじゃないんだ。彼女は自分の長男もなくしちゃったんだ。
それって、ぼくのことで、ぼくって、おかまだけど、
ぼくのことで、かつては、お医者さんが彼女をとてもうれしがらせたんだよ。
このごろ、ぼくは、家にいるときには、自分で洗濯もするし、彼女の代わりに料理もしてあげてるんだ。
だから、彼女は、すべての雑用から解放されて、休憩することができるんだよ。
いまではもう、みんな、ぼくにまかせて、自分ではなにもしようとはしないんだ。
彼女はただすわって、お茶から立ちのぼるうっすらとした湯気を通して、
オプラ・ウィンフリー・ショーを見ることもなく見たりしながら、
それには、うんざりしてるっていうよりは、否定的な非難のやぶにらみをきかせたりしてるんだけど
彼女には、見ることよりも聞くことのほうが、ずっとじょうずにできるんだ。
というのも、音楽を聴かないようにすることよりも、画面を見ないようにすることのほうが簡単だし
それに、ぼくには、彼女の年齢というものもまた、彼女の感覚をぶちこわしてるってことがわかってるしね。
一度、彼女を猛烈に怒らせたことがあってね、というのも、そのとき、彼女はめっちゃとりみだしちゃったんだけど
ぼくには、なんで、彼女が突然、気が動転しちゃったのか、その理由がわかってるよ。
テレビなんだよ。「…この売女め! ぼくのボーイフレンドを盗みやがって!
よりにもよって、自分の母親がそんなことをするなんて!…」
ぼくは、音がしないようにタオルを折りたたむ。ぼくには、彼女が思ってることがわかるよ。
そんなことをするなんて、クズのすることで、罪深い、しょうもないことなんだって。
ちょうど、ピルに含まれてる女性ホルモンをとることが
神さまのお考えになってることではないと、彼女が考えているように。
医者たちがどう言おうと、ぼくがゲイだってことは、疑いもなく自然に反していることなんだけどね。
彼女は、そんな痛みには耐えられないんだ。
オーブンのタイマーが鳴った。ぼくが焼いてたクッキーが焼き上がったんだ。
もうひと焼きしようかな。彼女は、そいつにはひと触れだってしようとはしないだろうけど。
四旬節のことはうっちゃっておけってことかな。
ぼくのお母さんの愛か。いったい、そいつは、どこに行っちゃったんだろ。