あうろら
あらい


ちいさな船内を おちていくもの
あるくもの こちらをみるもの
わすれないように、またな
千景は目を伏せて答える

初めて口にした親指の晦い階段を下りるとき
今しがた沈んだパイプ椅子ごと草原を喰む
母の髪を梳いた感傷にしぶくヒカリも
潮流に沿って往来していた
破損データ、の、ページをくだる旅
鵺の薄皮もゆっくり脈打ち
航海日誌をつつくポリリズムの宙域で
振り返ると黒いノコギリが目を開く
二等席の時間は単線ではなく
地球には存在しない蜈蚣が浮かんでいた
疲弊した時計にさざなみは帯が速めるシンバル

なぜに うたたねの人さし指
身を寄せた黒猫は じっと受け止めていた
今朝方、軌道を外れた耳の奥で瞬かせる
Uはまだ誕生していない銀河
歩み寄るほどに輝石が加速して撓む
東から西へ。だらんとぶらんが聞き直した
木星に忘れられたゾーキン
引き起こすカササギのゆらりに似て
あなたはルーペの歯を削るかがり
視界の端で一℃だけ跳ねる
展望室でうずくまるメギツネ
ヒトの呼吸はまた違うと耳打ちした

デイドリームがぐっとトチる
体表の薄い雪が溶けてできた後ろに立つ
廃棄された平たい月へ辿り着くが
揺れ続ける芯のぬかるみにほどけ
マナの瞳を確認しながら
擦れた製図に列をなした低いため息
灰白い梟はバケツに潜り
ログの中心には一点だけ転送した観測窓

誰だ、片足を突っ込んで咳をしていた
中心から送信される鱗粉ノイズ
モルタルの紙飛行機が逆光を蹴る
やがて新天地へ滲み合うとき
星々はただジャンクのような震動だった
横に並んだ古い歌 ふるい夜泣きは腕を組んだ
青白い骨格が露出したあの周期はモリの最奥
ホロスコープがハネに触れるのを感じた
遠方では 廃れた子どものちょうちょ結び

航海のあやとりは続き
すべて一つの糸のよう絡まりつく
かえるのうたは解凍しきれぬ
折れた降紗は薄い線で途切れかけに吐いた
私はざわめく 舌を失ったこえが、わらう
船医と近隣の小惑星は探針が同象になっていて
やがて壁のような茸雲から零れてくる
ブラックホールの振る舞い
地平線に近づく、くだん
互いを意識する規則と逸脱のあいだで
ひざ下に流れおちた心臓の磁場へひろがる


自由詩 あうろら Copyright あらい 2026-02-07 22:17:29
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