星にならなかった河童 第七章 見なかった人たち
板谷みきょう

村では、あの夜の話は
語られなかった。

誰が家を抜け、
誰の火が消えていたのかも。

帳面には、
また一行、空白が増えた。
それは欠員ではなく、
河童という神の取り分だった。

見なかったことで、村は守られた。

物語は完成した。

だが井戸水には、
時折、
欠片と同じ銀色の光が混じった。

人々はそれを、
「神の奇跡」だと信じて
飲み干した。

信じることは、
思い出さない技術でもあったのだ。


散文(批評随筆小説等) 星にならなかった河童 第七章 見なかった人たち Copyright 板谷みきょう 2026-02-02 13:32:46
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