星にならなかった河童 第七章 見なかった人たち
板谷みきょう
村では、あの夜の話は
語られなかった。
誰が家を抜け、
誰の火が消えていたのかも。
帳面には、
また一行、空白が増えた。
それは欠員ではなく、
河童という神の取り分だった。
見なかったことで、村は守られた。
物語は完成した。
だが井戸水には、
時折、
欠片と同じ銀色の光が混じった。
人々はそれを、
「神の奇跡」だと信じて
飲み干した。
信じることは、
思い出さない技術でもあったのだ。
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童話モドキ