星にならなかった河童 第五章 川へ行った者
板谷みきょう

荒れる水の中に、“影”が見えた。

「あれは河童だ」と
誰かが言った瞬間、
助ける理由は消えた。

“影”は、
重いものを背負っていた。

甲羅のようにも、
石のようにも見えたそれは、
枷と、
それを杭につなぐ太い鎖だった。

鉄は、
濁流の中で杭と男を一つに縫い止めた。

水音がすべてを呑み込み、“影”は沈んだ。

その夜、
誰も「助けて」という声を
聞かなかった。

聞かなかったことが、
この夜を越える条件だった。

条件は守られ、
村は静かに息をつないだ。


散文(批評随筆小説等) 星にならなかった河童 第五章 川へ行った者 Copyright 板谷みきょう 2026-02-01 16:21:52
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