星にならなかった河童 第二章 河童の噂
板谷みきょう
いつからか、川には
「河童がいる」と言われるようになった。
言葉は、地面から滲み出たように広がった。
見た者はいない。
けれど
夜の川が、笑っているように
聞こえる日があった。
「河童だな」と年寄りが言えば、
人々は安心して眠れた。
河童という名を与えると、
不条理は「いたずら」に変わる。
夜、川面で“チリン”と
金属の音が鳴るたび、
人々は笑った。
それが杭に結ばれた鈴の音だとは、
誰も口にしなかった。
河童は、まだいない。
だが物語が必要な夜には、
確かにそこに“いること”になった。
名を持たぬものは恐ろしく、
名を与えられたものは、
すでに半分救われていた。
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童話モドキ