星にならなかった河童 第一章 川のある村
板谷みきょう
村のはずれに、川があった。
山から下り、すすき野原を横切り、
村の前で肘を折るように曲がる川だ。
川は澄んではいたが、やさしくはなかった。
洗えるものは、すべてここで洗った。
泥も、血も、言いにくい出来事も。
流れてしまえば、なかったことになる。
人は、ときどき川に奪われた。
理由は決まって“運が悪かった”から。
春のはじめ、年寄りが一人、橋の中央まで行く。
川を見下ろし、黙って戻る。
その年も、人数は数え直されなかった。
数えなければ、間違いにはならない。
ただ、橋の杭の根元にだけ、
村の誰のものでもない古びた真鍮の鈴が、
一つ括り付けられていた。
その鈴は、鳴らすためではなく、
忘れないために結ばれていた。
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童話モドキ