臨界
花野誉


布団ごしに
差し出された 夫の手

腕ずもうするみたいに
握ってみたら

涙が 溢れてきた

体の中で
飽和していたものが

やっと
機を捉えて
流れだした

そんな涙

眠る あの人の顔も
みんなの 泣顔も

なにも
浮かばなかった

ごめんね わたし

ちゃんと
そうして
あげられなくて

こんな
性分だから

でも
すこし
何かが 軽くなった

そんな
気がする





自由詩 臨界 Copyright 花野誉 2026-01-28 22:40:02
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