トイレトレーニング
リリー

 わかい母の呼びかけに首を振り
 父の実家のお座敷で小走る
 ニワトリの様な女の子
 おむつが外れてから
 便意を我慢してしまうクセのついた子の
 浣腸でひとそうどう

 陽のあたる縁側で待ちぼうけしていた
 女の子のコハクチョウ
 やっとその背に跨り気張って出した
 数十個もの鹿の糞を、
 祖父母からもほめられて

 ちゃんとお通じがあれば
 祖母からもらうようになった
 キャラメルやチョコレート
 姑の協力で共働きをしている母は
 困ってしまう
 お菓子を食べたがるクセのついた子の
 乳歯は奥歯が溶けてしまった話
 腸活を意識して励むそんな年になっても
 覚えている

 そして、病床に伏した亡き母が
 ICUで寝たきりになるまで
 ポータブルトイレへ座った時
 痩せ衰えた脚を踏んばって
 「これが今のママの仕事だから」と
 私へ笑顔をみせた

 この先わたしもどんな老境に入るか
 わからないけれど
 いつかベッド傍にポータブルトイレが
 寄り添う身になったらソレを
 遥かな時を超えて現れた
 私のコハクチョウの化身だと思いたい

 
 


自由詩 トイレトレーニング Copyright リリー 2026-01-28 06:31:18
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