とおりゃんせ
夏井椋也


大好き
どちらかというと好き
どちらかというと嫌い
大っ嫌い
どちらでもない
わからない

迫り来る選択枝から
必ずひとつ選んで
枝先に向かって
背中を押され続けてきた
やがて雫となって落ちることを
うっすら覚悟しながら

時間に追われるまま仕方なく選んで
誰かに倣うようになんとなく選んで
選んだつもりがないのにいつのまにか選んで
自分で選んだつもりで誰かに選ばされて

今は此処にいるけれど
此処は何処の細道?

痛いけれど懐かしい
酷いけれど優しい
ほんのり血の色じみた
西日に満たされた細道

とおりゃんせ
とおりゃんせ

まさかの天神様の細道を
とても罰当たりなわたしが
たいした用もないのに
声に背中を押されて歩いている

とおりゃんせ
とおりゃんせ

行きは良い良い帰りは怖い
怖いどころか帰って来れない
それでも怖がらなくていいと
声は優しく背中を押す

とおりゃんせ
とおりゃんせ

まもなく次の選択枝がやって来る
ますます細くなっていく道の先は
夜なのか朝なのか昼下がりなのか
晴れているのか土砂降りなのか

どちらにしても次の選択肢は
「大好き」を選ぼうと決めている



自由詩 とおりゃんせ Copyright 夏井椋也 2026-01-25 15:45:50
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