雪と心
杉原詠二(黒髪)
私の心の構造が
私を駆動する
雪玉を転がして
大きく膨らませよう
雪は柔らかくて
形がどれだけでも変わる
色んな形を作れる
だから僕らも
心を雪玉のように使って
様々なものを作り出そう
雪は白い
心の色は分からない
照り映える心は
何色でもない
ゆえに空にしたがおう
雪が空から降ってきたように
私たちの心も
あるとき上から降ってきたもの
それを持っているということが
私たちの愛を自証している
私たちの愛は壊れやすいのだ
それゆえに価値がある
そして壊れやすい愛が集まったとき
人類は偉大な行為をする
人は救われ得るものだ
孤独な存在として死を前提としながら
生き抜きながらも
その中にある愛の構造が
雪のように静かに佇みながら
すべての人の存在をやさしく見守っている
あなたは考えたことがあるか
人を刺し殺すその手が
かつてその人の子を
抱いたことがあるということを
両面的存在である人間は
罵倒も愛も口に出せる
そしてその口を使って
人は息をせざるを得ない
この制限こそが
人間に与えられた恩寵
悲しみと喜びに心動かすのは
人類がずっと向き合って来た
善と悪の相克の中に生じる
確かな恩寵
静かに積もった雪のように
少しずつ確かめられていき
そしていつかは溶けて消えざるを得ない
私たちの見てきた恩寵
思われるものは
幻の理想ではなく
現実存在として
つながりとして残って
いつまでも光輝く
そして私たちの心は
痛みも喜びも経験してきたから
それを認める大きな度量を
手に入れつつある
私をその手で抱きよせてよ
そして静かに眼を閉じさせて
そして手で頬をはさんで
私の唇に口づけて
心理が真理に触れる瞬間――
体で真実を確かめさせて
生まれて初めての口づけだ
純粋な心であなたと
あなたの心を得ることが出来ないならば
せめて契約で縛って
瞬間を永遠にしたい
真っ白な雪原の上で
ひとつになりたい
太陽がやさしく見守っている下で