雪男
月乃 猫
街の灯も 音のない雪。
歩幅をかえることのない
繰り返しの日々に
息を潜め
あからさまな
白い息に
暖くもりをもとめる夜
夜の戸の音は控えめで、
永くなかった人が訪れる。
女は裸足で、
見覚えもなく、
―― 道に迷ったものです。一晩、泊めてもらえませんか。
―― いくら。
―― これでいかが。
昔話の 何かを思いやり
せまい 商店の街をはずれ
踏切の音のする三階へ
外階段を上るのは、
何かをきっと
間違っているというのに
言葉すくなに三本立てたその指の 手をひいた。
一夜
重なり合う息に、柔らかな透き通る肌がこたえ、
夢は覚めず
凍てつく冬の
迷い猫を 家に招じ入れるように
女を
拾う
男は、いつの間に 住み着いた女の
心をうばう 笑顔に
願うことを思い出した。
さよならと、
痛みを残す
鋼の鱗を増す 重さに
歩みもがき
逃れようと 忘れようと
山を訪れては、
踏みしめた雪に置き去る。
見つめる君は
森の静けさのまなざしに
何も知らずのふうで、
すべてを理解する
昼間の一人のさみしさに
やってくる野良猫と話をしていたり
飛んでくる鳥たちに 耳を傾け、
雪山をさびしがり
連れて行けば
人目もはばからぬ
裸足で 雪をふみ
無邪気にとびまわる
時は、
いつか寂しさを、女とともに流し去り
切なさに
しばらく
もうしばらく
生きていようと
想う