半分くれる人
花野誉


夫は
思っているより
優しい人かもしれない

今朝
お椀をひっくり返し
自分のお味噌汁が
ぜんぶ無くなった

しかたない、と
食パンを齧る

不意に夫が
「ほい」
自分のお椀を私に寄越す

こういうことに弱い

自分が食べている物を
半分くれる人に
手放しで感動してしまう

子どもの頃
可愛い顔をした
ひどく食い意地の張った妹から
おかずを死守してきたからか

「ぜんぶ食べ」

お椀に半分ほどあるお味噌汁
ごく当たり前みたいに
私に寄越す

思い返せば
ちょくちょく
そんなことがある

「食べてみ」
「もっと食べていいで」

そうやって
こだわりなく
自分のものをくれる

お義兄さんに
〝いけず〟されてきた人なのにな

私より
ずっと
ええ人かもしれない





自由詩 半分くれる人 Copyright 花野誉 2026-01-19 19:45:16
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