台風の眼
岡部淳太郎

いまも 周囲では風が吹きすさんでいるようだ
だが この心は妙に落ち着いて
周囲の騒動を面白いものを見るように眺めている
そうして眺めて 自らの心の裡に沈んでいると
投げやりな気持ちでも
どうでもいいような我関せずの気持ちとも異なる
大きく自然な放下の気持ちがやってくる
かつて俺は吹き荒れる台風そのものだった
触れるものすべてを薙ぎ倒しては壊してきた
だが いまはそんな気持ちからはとおい
人々は変わらずに右往左往しては
この世の終わりに脅えて
真理はどこにあるのかと思い悩んでいるが
もうあの季節を過ぎた私にとっては
心持ちしずかに眺めているだけだ
今日も世界は狂乱し
荒れ狂っては人々の背中をどやしつけているが
その強風が私に触れることは決してない
ただ私は一人 孤独に眺めている
周囲を風が吹き荒れるなかで
そのまんなかの特異点のようなものとして
大きな眼としてすべてを観察して
自ら吹き荒れることはない
この 吹き飛ばされることも
雨に濡れることもない
平和な眼のみが
私を私として徴づけている



(2025年12月)


自由詩 台風の眼 Copyright 岡部淳太郎 2026-01-19 10:29:14
notebook Home