Bad Medicine
ホロウ・シカエルボク
世界がもうすぐ終わるってノイズだらけのラジオが呟いたのさ、でもそれはもしかしたら短いドラマの一節だったかもしれない、ノイズの隙間にそんな言葉が挟み込まれただけだったからそれがどんな文脈の中から投げ出されたものなのかなんて語りようもない、だけど唯一確かなことはそれはもの凄く胡散臭いくらいに示唆的に響いたよ、人間ってどうしたってそういう場面に踊らされる生きものだろ、俺もご多分に漏れずそんな感想を抱いたよ、でもそれがいったい何だって言うんだ?どうせ世界なんて誰かの都合で終わりを迎えたりしないしそんな気分で一日を畏怖しながら過ごしたって結局いつものように淡々と終わってしまうだけなのさ、騙される方が悪い、世界にはいくらだって、数え切れないほどの嘘が溢れている、影響力のある嘘つきが下らない事を言って、クソ真面目な馬鹿どもがそれを真に受けて思惑通りに動き続ける、社会っていうのはそうやって構成されていくんだ、思考を奪われた傀儡どもが増殖しては激減してそんな規律を繋ぎ続けていくのさ、決められた枠の中でしか考えることが出来ない、あてがわれたルールの中でしか動くことが出来ない、現状維持以外に何も出来ることがない、そんなシステムだけがいつだって確立されている、誰が何を言ったところでその根幹は覆ることがないんだ、でもだからこそ、俺はその片隅で声を上げ続ける、でないと本当の意味で世界が終わりを迎えてしまうからね、いや、別に、変な責任感とか使命感とかでやってるわけじゃないんだ、前にも言った通り、俺は基本的に快感原則で生きている人間だからね、今よりも少しはマシな気分になりたくてやってるだけなのさ、でも、そういう人間が語る言葉が少し人目に付くような場所にある方がきっといいだろうっていうぐらいのことは考えているよ、俺のようにそういう下らないシステムについていけなくなった誰かが新しい気付きを得るような手助けになればいいなってね…この世界にはそういうものがあまりに少な過ぎる気がするんだ、いや、もちろんこんなことをしている人間だって山ほど居るんだけど、それがどこか他の世界と接点を持つことがあるかって言ったらそんなことは中々無い、まるで鎖国政策を取り続けている国みたいに、あるいは近頃流行の異世界みたいにまるで別々に存在している、ある一定の条件をクリアしないと境界線を越えられないってところも確かに似ているよな、それはどうすれば越えられるのだろうか?どんなに頑張っても越えることは出来ないものなのだろうか?俺はどちらかと言えばもう手遅れなのだろうと考えている、ある一定のラインを越えられない人間というものがあまりに多過ぎるんだ、自分が作った檻に自分で収監されて、無期懲役を生き抜くのさ、どこ目線だとか傲慢だとか、好きなように言えばいいよ、それが俺がこの世界の端っこで感じ続けて来た真実には違いないんだ、世界はもうすぐ終わるんだって、それを終わらせるのは別に人間じゃない、環境破壊なんて地球にしてみたらちょっと厄介な皮膚病みたいなものだ、例え地表が荒れ果ててすべての生物が死滅してしまったところでそれは世界の終わりじゃない、マグマは燃え続けるし雨は降るし風も吹く、もしかしたらこの地上は一度完全に初期化されるべきなのかもしれないよ、そうしてまた素っ裸で食いものを探すところから始めるんだ、ある地点まで戻ってやり直すことは絶対に必要だ、地図アプリで世界中を見渡せる現代よりもその地平で見える景色は圧倒的に広くて大きいだろう、生きものとしての感度の問題さ、何を感じ、何を掴み取る為に生まれて生き続けているのか、それが欲望として消化されるにはどんな生活をすればいいのか、そういうシンプルで尚且つ複雑なプロセスを最初から最後まで自分で作り上げることが必要なんじゃないか、真実を誰かに貰うことなんて出来やしないんだ、その本質は多分百年元気で生きることが出来たって手に入れられるようなものじゃないと思うぜ、手に入れることが目的なんじゃないんだ、それにどこまで近づけるのかということなのさ、どんな風にすれば、それを間近で拝むルートを見つけることが出来るのかっていう話なんだ、途方も無い話だぜ、もし辿り着けたところでそれはほんの真実の片隅に過ぎないかもしれない、だけどさ、一歩も動かないで生を全うするよりはずっと美しくて誇らしいことなんだ、どうせ騙されるんなら、俺みたいなやつに騙されたほうがいいと思うぜ、少なくとも自分自身で生きるという道ぐらいは示してあげられる、別に宗教を始めようってわけじゃない、誰かの為に書くわけじゃない、誰かと肩を組んで始めようって話でも無い、一人でも出来ることをつるんですることは無い、たださ、俺はもう少し面白いものを見つけたいんだって思いながら生き続けているだけなんだよっていう話をしたいだけなのさ、表へ出て、何か新しいことを始めよう、そんなロックの歌があったよね、俺はいつだってそんな風に、初めてのことに手をつけながら明日を迎えたいのさ、もしも世界が終わる時が来るのだとしても、俺には必ず明日が訪れるだろうと信じて眠りについていたいんだ。