永ちゃん
うめバア
二人の男が外套の襟を立て
いずれも少し背中を丸めながら
ホームに立っていた
少し離れて並ぶ
1月の
東急池上線 大崎広小路駅
今日は風が、とても冷たい
「野口五郎とかな」
「布施明とかさ」
「ああ」
男たちは歌手の話をしているのだ
「永ちゃんはな」
「永ちゃんは、シビれるよな」
「そうだオレ今度永ちゃん歌おう」
「永ちゃんいいよな」
「いいよぉぅー」
「永ちゃんなあ」
永さん、ではなく
永ちゃんというからには
永六輔ではなく
矢沢永吉
であるに違いない
彼らよりも少々遅れて生まれた私には
永ちゃんは少しお兄さんお姉さんの音過ぎて
通ってこなかった文脈で
だけど年のころ70はとっくに過ぎたであろう外套の男たちが
こんなにも嬉しそうに話していると
永ちゃんが、どんなにグレイトだったのか
テレビで見る永ちゃん以上の、永ちゃんの芯がわかる
検索やチャッピーで調べる
生年月日や来歴やリリースなんかの情報よりも
おそらく、あの外套の、二人の背中のほうが
永ちゃんを、愛している
思い出すことが多くなる
通ってきた時代を懐かしむ
だけど今一度
まだもう少し、生き直す
まだ、今を生きている
永ちゃんリスペクト
もう、それだけで十分だ