B♭の風景
たま


海の(とほく)
空の(たかく)青々と
泡立つ絵の具みたいに
詩を書くぼくは B♭の楽器だ
とき放つことばは いつも一音ひくい

風の(はやく)
浜辺の(しろい)
汗を奪(ふ)光りのなかで
ギターを弾くぼくは Cの楽器だ
Cは苦手だ
歌を唄えば ひどい音痴だった

母の(もふ、いなゐ)
汗と泪の(あつひ)ことばを拾う
十六夜の夜更けの
父と母が いとこ同士だなんて
よくある話しだから(まあ)気にしないけれど
夏も 冬も(竹の秋も)
語りつづけた記憶は すべて一音ひくい

希望の(こゑの)
満ち溢れた(ちへゐせんに)
この街の風景が 一音ひくいだなんて
ぼくは知らなかった

海の(ふかく)
泡立つ七十二才の格助詞
(の)に閉ざされた B♭の風景
それがぼくだ








自由詩 B♭の風景 Copyright たま 2026-01-03 15:31:01
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