水色の花
atsuchan69
転がしながら、
口のなかで潰れた名前を
ことばとしてならべる
牙が欠けるほど
名前をぶつけたあと
世界は聞かなかったふりをする
その沈黙へ
推奨されないことばを置く
水を吸った葉が、
木漏れ日に活き活きと透かされ
薄い緑が
風にゆらめくように
すべての歯が抜け落ちてしまい、
夜更けに笑う
不吉な顔のように
ことばを壊しながら、息をした
静寂の谷をこえ
幾日も、
幾日も、
歩きつづける
干し肉を齧り、
夢を飲み干して眠る
灼熱の砂漠で、
夜露を吸った硬いことばの傾斜に
深くながい穴を掘る
女は曖昧の中にいた
名前を呼ばれる前の音として
女は、砂になった
絶望せよ、
絶望せよ、
壊しながら、
それでも歌え
砂の穴から這い出ると、
朽ちた地上は微塵の声もなく
混凝土の高架は蔦に覆われていた
さらに、
生茂る蔦に絡まって
水色の花が幾つも咲いている
花の名前はなんだってよかった
傾いたビルが、
太陽を背にしていた
ひび割れたアスファルト、
崩れた街の残骸から
忘れられたことばが芽を出している
ことばたちは、
まだ死んでいなかった
さあ、ならべろ、
蔑まれたことばをならべろ
潰れた声や、
揮発性の記憶の匂い、
なんだっていい
人の想いが自由に咲き乱れるまで
水色の花よ、
名前は美しくなくていい