口癖
たもつ



正門の所で
白濁した眼の犬が
伏せている
あなたの差し出す手に
少しじゃれて
午後にはやはり
日差しが似つかわしい
栄養のあるものを食べなさい
あなたは口癖のように言うけれど
他の口癖を
わたしは思い出せなかった
かつて統治した者の銅像以外
ここに吹く風には
遠い春の気配がしていた
栄養のあるものを、と
何回目かを言いかけると
老夫婦を乗せたトゥクトゥクが
真っすぐに通りを抜けて
わたしたちはもう何の
日々でもなかった



自由詩 口癖 Copyright たもつ 2025-12-23 06:48:35
notebook Home