天推し
百富

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 しあわせでしか、ない。そのことを、それとなく命へと置き換えられたときに、祈りの言葉が生まれるのだと想う。



 ひとに恵まれていること、この街がパワースポットであることを実は、ぼく、知っている。



 アパートメントの契約がうまくゆき、お引っ越しのためのお車から降りたときに、さんにんでみあげた幅広の虹の大群。



 生きることに殺される思いを味わうことがあっても、天高く駆けだす想いでいられたこと。



 瞳の明るいキレものの主治医。おそらく能力者であるかのように、ぼくのこころへとより添う保健師さん。知見に満ちたとてもお話しを伺いやすい市役所のかた。泣く想いでドアーを両手で押す勢いで開いた自動ドアーのさきにいらっしゃった保健所のかた。警察のかたは、どのかたも兄ちゃんとお呼びしたいくらいの切実な印象で。



 なんだなんだと、想いつつ、気がつくと、この場所に長居する気持ちが膨らみ、死ぬほどの傷みすら、心置きなく美徳と語ることのできるほど、一瞬で目から鱗がおちてゆく。



 きれいなもんだなぁ、きれいなものだとおもいます、想わず、桂ざこばさんが、お師匠さまである米朝さんの死について語られた名言が浮かぶ。



 素直さって、唯一のごとくきれいなものだ。桂米朝さんの落語で、ぼくのいちばんすきなお話しは「まめだ」だ。



 落ち葉もフサァって重なることで、得がたいほどの温もりとなるのだよ。



 ダイアモンドも輝きを忘れることがある。そちらをみつめるひとの目が豊かに穢されたかたちでは、指輪を身につけても指のごつごつが強調されるだけで、本当は、なにも身につけていないのだ。



 宝ものは天に推しあげようよ。天推しだぜ、ぼくら(!)!



 意気揚々と生きることは難しいから、どのかたの人生も東京大学への受験並みなのでありましょう。



 自殺も欲望だと知れば、抑止力にもなるのでは。しにたい気持ちまで欲にかまけていると捉えられるのは腑に落ちないことだから。



 あゝぼくも、どうやら大丈夫そうだ。公的なかたと金銭的なやりとりのない友人とだけ繋がろう。



 ダイアモンドは、おかねで買えない。欲にかまけたダイアモンド自殺なんて、未遂でもこりごりだと、いまは想うよ。



 この街並みの内側で宇宙をみあげる孤独の価値は孤立では味わえない。みんなのいる惑星だから、ひとりぼっちでも立っていられる。生きてありがとう。



 ひとりきりのお部屋で,Melanie Martinez 〜の音楽がスピーカーから、ゆるゆると流れてくる。まっしろでなにもない。ぼくは、このままでいることをはじめたよ。



 この命に良質な孤独を知る価値観を、かみさまはお与えなさった。自閉症はギフトだと想う。ゆこう。きみも、きみも、きみたちも。



 きょうは通院日でした。ありのままの、ぼくの素直さが、いま、ようやく、だいすき。

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散文(批評随筆小説等) 天推し Copyright 百富 2025-12-22 19:00:05
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