うなずいて言われるままにここに来ていまや迷子となりしや我はいずこか
いつだって曖昧にうなずいてきた
そうして 自分というものを主張出来ないまま
言われるままに進んできた
そこに俺の意志はなかった
少なくとも 「俺」という
生々しいギラギラしたエゴのようなものを隠して
何となくやり過ごして
それだけで済ませてきてしまった
その結果がこれとは
何とも滑稽ではなかろうか
道は無数にあったはずなのに
言われるまま進んだ結果
道を見失って迷子になってしまった
自分自身が何者であるのかもわからなくなり
放下すべき夢も理想もなく
この身に迫る秋の気配
しずかな滅びへの予感を含んだ
*
この世をばうなずきながら受け入れて世界の同意の前に無言で佇む
世界はいつも 僕以外の人々の同意で構成されていた
それを僕は うなずきながら
受け入れるしかなかった
そうしなければ
そもそも世界のなかに容れられることはなかった
だからこそうなずいて
受け入れてきたのだが
その結果はなんだったか
世界は変わらずに
僕以外のすべての人々の同意をいつの間にか取りつけて
僕は それらの数多の同意に囲まれて
それらの圧力にさらされて
言葉を失うしかなかった
世界も人々も
そうした酷薄さのなかで笑い合い
それについてこられない人々を置いたまま
先に進もうとしてしまう
僕はここに取り残されて
風にさらされて
時に雨に濡れさえして
歌えないまま
唇を噛み締めるしかない
(2025年11月)