ぬけられます
atsuchan69
ぬけられます
と、
白い戒律の剥がれた板に
赤錆びた日本語が
合法を装ってしがみついている
飢えと寒さのために、
大勢の煌めくことばが死んだ
ただ夢を叶えるために、
「嘘だ」
と、叫んだ男は射殺された
二階の窓から手を振る
化粧した女たちの作り笑い
米の値段が上がり、
移民たちと交わる日々に
こころは少し病み、
木漏れ日を浴びながら
スマホを弄る
捨てられた仔犬
破られ、燃やされたことば
きっと、ぬけられる
いつか、どこかへ
信じては、幾度も裏切られた
指と爪のあいだに
黒い一日の労苦があった
手を洗い、飯にする
いつもの牛丼屋で大盛りを頼む
あちこちで見かける外国人
この店で、彼らと同じものを食べる
빠져나갈 수 있습니다
という、
街中の壁に滲んだハングルが
合法を装ってしがみついている
腹を満たし、
近道の匂いを嗅ぎに行く
狭い路地裏で、
湿った街の匂いを吸い込み
自分の影と、
胸の高鳴りを整える
ぬけられます、
そう呟いて
ポケットに手を入れる
静かに、まだ見ぬ出口へとむかう