religion
ホロウ・シカエルボク


赤銅色の概念の内訳は長く明らかにされなかった、そこには明らかに俺以外の人間の、あるいは俺自身が認識していない領域にいる俺の手によって封印が施されていた、と言うことは多分、これはいま知る必要の無いことなのだろう、知るべきことというものがある、知るべき時というものもある、今はまだその時ではないのだ、時限式の爆弾のようなものだ、知るべき時が来ればおそらくその封印は勝手に解けるだろう、でも、そうでない可能性もある、一生詳細に知る必要の無いもの、けれど、持っておき、それを感じていることが大事というもの…これは果たしてどちらだろうと俺は考えた、けれど、今この時どんな結論を出したところで、憶測ということになってしまうだろう、だから、俺はそれをなんとなくあることを知っているという程度に留めることにした、そういうものがある、なんだかわからないけれど持っておく必要があるものらしい―思えばこれまで手にしてきた真理の様なものも必ずそんな印象を与えていた、経験による判断、それは馬鹿に出来ない、俺は静かにその回路に蓋をした―食事の途中だった、少しの果物とコーヒー、朝はそれで充分、常に空腹が満たされていると身体が重い、動く予定がある時は少し空いているくらいが丁度いい、食事、一日三食食べるのが一番良いとされている、もちろんそれを信じて続けている人間にどうこう言うつもりなんてないけれど、でもそれは日本人がもの凄く働いていた時の基準だ、大地を耕し、自然と戦いながら稲や野菜を育てていた時代の話だ、現代のワークスタイルに沿った基準とは言えない、それは間違いだって?俺はそうは思わない、もしも朝昼晩きっちり食うのが正しいのなら、世間にあれほど太った人間が歩いているのはおかしいというものだ、俺は夜しかきちんとした食事をしない、昔、ある仕事をしていた時に俺のこの話を真っ向から否定した人間が居た、でもそいつは禿げていて歯も無くて太っていたよ、俺は歳を取っても腹が少し弛んだ程度だ、まあ、ルッキズムってわけじゃないけどね、生活において何を重要視するかっていうのはある程度外見に現れると思うよ、無駄なものが付くと感覚だって鈍る、それが杓子定規でしかものを測れない人間を大量に生み出しているんじゃないのか?まあ、だから誰にどうしろって話でも無いけどね、俺はそう思ってそういう暮らしをしてる、たまに健康診断みたいなものを受けるけれど、毎回優良だよ、これはある意味で俺の生き方が正しいことの数少ない証拠でもある、結局のところ人間を生かし続けるのはオリジナルの哲学だ、それは自分だけで手に入れなければならない、誰の手を借りてもろくなことにならない、俺の呼吸の仕方を知っているのは俺だけだってことさ、人間というのは誰一人として同じ形をしていない、同じ考え方をしていない、同じライフスタイルをしていない、正解がひとつしかないと思う方が間違いなのさ、自分が自分として生きるために情報や体感をどう消化ていくのかという問題なんだ、たいていの人間がそこを飛ばしてしまう、まるでアイデンティティというものが存在していないみたいにね、俺にはそれが不思議で仕方が無い、彼らにとってはきっと、先に決まっていることの方がなにより大事なんだろうな、それ以外の方法や定義が存在するという事実をまるで気にしないまま歳を取っていくのさ、そういうことについて考えていると俺は時々本当に集団というものが怖くなってくる、ひとつのイデオロギーを共有出来る数十や数百、あるいはそれ以上の人間の群れなんて恐怖でしかないじゃないか、俺は子供の頃からそういう世界に染まることに疑問を感じ続けていた、だからおかしなやつだとよく思われたよ、でも俺は自分の方がまともなんだと考えていた、そしてそれは正しかったと―とんでもなく正しい認識だったと歳を取るごとに実感しているよ、そう、結局のところこれは、ひとりで生きることを選択するかどうかという問題なんだ、俺はひとりで生きること…それはつまり自分の為に生きるということだ、ひとりきりで生きるという意味ではない、自分自身の思考と感覚で選択したものを吟味しながら生きるということだ、自分の為だけのアイデンティティを持ち、必要なもの以外には耳を貸さず、常に自分で行先を決めるということだ、そこには必ず前例が無い、俺は、俺の前にも後にも生まれていないからだ、そうじゃない可能性もあった、俺は、そこらへんでテンプレ通りに生きている人間の仲間入りをする可能性だって十分にあったのだ、でも、結局のところ、俺はそれを諦めた、何もかもを世間的な標準的な感覚に委ねて、楽だけれどどんな学びもないような人生を生きるなんて絶対に出来ないと思ったからだ、どんな負債を背負い込むことになっても、自分だけの人生を生きようと決めたのだ、そして、こうして無数に書き残すものが、いつかその証になればいいと考えているよ。



自由詩 religion Copyright ホロウ・シカエルボク 2025-11-30 21:23:27
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