それは素粒子よりも細やかそれはあやとりそれは贈り物第二幕
武下愛

暗闇だけの頃、触れ合い擦れる感触、肌に伝わる振動、煮詰められた咆哮、手探りした香り、譫言の熱、が、頼りだった。予めでは無い空間。空間を含めた全て、妖精の尻尾を掴むのと一緒。持ち寄った種は無駄を嫌う。存在する事だけ、ではなかったから、可能なだけ多光草へ。知らなくても、駆けていく言葉を問わなかったね。



宙に浮かぶ超光硬岩。夜の証として象徴されている。盲目の人にしか見えない。一つだけしかない空滴を捧げると、超光硬岩が明るすぎない程度に危険を防ぐくらいの明るさになった。空高くある月とは違い、見守るだけではなく、多光草と喧嘩せずにずっとあり。視界をまもってしまう。



透けて淡い色の柔らかい花弁を飛ばす硝子の薔薇。透明でありながら触れることができない。触れられないけれど吹き抜ける時に全てへ確かな温かさをくれる。強さを捧げると、身に光を宿してくれた薔薇が香ってくる。過去と現在と未来の中で熱感を与え続け、空間を縦横無尽に舞ってしまう。



透明無限回廊。歩んだ道のりは整地されることを嫌わない。透明さを主張する時を黄昏。分かる人は誰よりも迷いたくなる、けれど道を指示してくれる。注げるだけ捧げると、葡萄酒をこぼしたような道のり。自由による不自由は、何処までもわがままで良いと教えてしまう。



境界が分からないほど空間をなみなみと満たす空気水。蹴り上げれば浮遊する動けば緩やかにさせる澄んだ水。知らないから、何も感じない思わない考えないという人々は無関心。核が無くても泡という真珠だけを産む貝を捧げると、核が無くても沫という水晶だけを産むスペクトラムを水が染み込ませてくる。現象のパレットにスペクトラムを絞り出して、教養の絵筆でスペクトラムを。しゅわしゅわしてる捧げてきた全てが線香花火の様に弾けてしまう。



それぞれに透明糖を投げる。気に入らないと自作の透明糖が返ってくる。糖だからって甘いわけじゃない。



微光よりも、ほのかな微光だった頃、私達が滴らせた全素。それぞれの全素がゆっくりと一つになってティアドロップ。空間に落ちて輪を伝えて私達をなぞる。冷たくて噛み砕ける硬さではなかった。輪郭でなめて溶かし、流れ出るほど溜め込んだエネルギー。多光草。超光硬岩。硝子の薔薇。透明無限回廊。草は種だった。岩は水だった。硝子は砂だった。回廊は迷路だった。これからも駆けていく言葉を、問わずにいますように。


自由詩 それは素粒子よりも細やかそれはあやとりそれは贈り物第二幕 Copyright 武下愛 2025-11-18 16:54:55
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