抒情詩 Ⅳ
岡部淳太郎

それは、
行くあてもなくて
目指す場所もなくて
ただ そこにあって
漂っているだけで

それは、
目的もなくて
誰にあてるというのでもなく
ただ そこにあって
揺れているだけで

それだけで
時に人の耳目をあつめて
おおげさな思いや形に
なるのでもなく
見つめていると
しだいにやわらかく
雲のようにかたまっては
流されていくだけで

それは、
波のように寄せてきては
また離れていって
ただ そこにあるのに
つかまえることは出来なくて

それを、
完璧にうたうことは
誰にも出来なくて
それでも ただそこに
意味ありげに流れてあって――



(2022年3月)


自由詩 抒情詩 Ⅳ Copyright 岡部淳太郎 2025-11-17 15:14:33
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