夢の足跡
花野誉
夢は記憶の足跡とも聞く
舟に揺られ、震えて叫んでいた
夕暮れよ
あなたは気まぐれで
私を弄んだまま、夜ヘ送った
夜よ
あなたは私をその底に沈め
耳を塞ぎ、目を覆わせた
朝よ
あなたは容赦なく
私を波際に打ち上げ
濡れた砂の上に置いていった
私は目も当てられない様で
砂浜に裾を引き摺り、舟を求めた
魂の熱は高いのに
冷えた浜風に歩が進まない
もし、あの時
心の声に耳を澄ませ
先行く私の姿を見つけていたら──
風よ
私を、あの人に見つからない場所へ
太陽よ
私を温め、二度と見失わないで
昨夜の夢
きっと あの時のこと
目覚めて 今に安堵する