夢の足跡
花野誉


夢は記憶の足跡とも聞く

舟に揺られ、震えて叫んでいた

夕暮れよ 
あなたは気まぐれで
私を弄んだまま、夜ヘ送った

夜よ 
あなたは私をその底に沈め
耳を塞ぎ、目を覆わせた

朝よ
あなたは容赦なく
私を波際に打ち上げ
濡れた砂の上に置いていった

私は目も当てられない様で
砂浜に裾を引き摺り、舟を求めた

魂の熱は高いのに
冷えた浜風に歩が進まない

もし、あの時
心の声に耳を澄ませ
先行く私の姿を見つけていたら──

風よ
私を、あの人に見つからない場所へ

太陽よ
私を温め、二度と見失わないで

昨夜の夢
きっと あの時のこと
目覚めて 今に安堵する














自由詩 夢の足跡 Copyright 花野誉 2025-11-15 20:34:35
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