学生街のカレー屋さん
松岡宮
道を間違えて迷い込んだ学生街
近隣でもっともお安かったから入ったのだ
その店の名は「クマリマー」
大きな窓辺にガネーシャが並ぶ
とてもすいているカレー屋さんだ
最近の学生は裕福なのだろうか(ソナハザネー)
窓の外には背の高い並木がうろこ雲を突き刺している
これからお仕事がんばり〼
野菜カレーはいちばん安かったから頼んだのだ
たどたどしい日本語で辛さを訊かれる
すぐに届いたナンはほかほか
辛さ「2」のスパイスが咳を連打する
ラッシーの白でおさめる(わんわん!)
少ない客の支払いはみなペイペイ
時代は変わってゆくんだねえ
これからお仕事がんばり〼
ここは夢でみたような街だ
そこではいつも焦っている
夢でみた街には鉄道はなくバス便などを苦労して探す
飛行機の時間に間に合わない!
なぜかプールにドボンと落ちて
焦りまくって目が覚めて
ああ夢だった、こちらは現実。
ルゥのほうが美味しかったので野菜の塊が残った
皿のルゥをナンに吸いつけあわせていただく
食べきれないナンは冷え冷え
包んでカバンに入れてしまおう
現金で支払い店を出ると
背の高い木々の奥から光に包まれたバスが走り去る
それはわたしの住む町まで行くバスだった
嗚呼、あれに乗ればよかったのだ(クマリマー)
ナンだもう、帰れないじゃないか(ソナハザネー)
落ち葉を肩にいちまい乗せた瞬間
同級生の訃報が届く
これからお仕事がんばり〼