最初から知ってた
花野誉


最初から知ってた

きっと私のどこかが感づいてた

あなたが私のことを好きでないこと

好きになろうとしてくれたのかもしれないけれど

あなたは一人で夢を見てた

私の笑顔が素通りしていくのを見てた

その言葉は誰に向けたものか

だんだん確信したけれど意地になって

希望の種を撒き続けたら

花にも実にもならず

得体の知れないものが生えてきて

幾つかの脇道にまで逃げる始末

結局

眼鏡の奥の細い目は どこも見ていなかった

私じゃあないんだ

確認するために会うみたいになって

─あなたは、あの時で止まっているのではないですか?

だとしたら

私にかまわないでほしかった

そんな想いも遠くの昔

あなたと学んだものは私の糧になったけれど

あなたと交わした情は思い出せない

不思議なくらい ときめかない

時折 夢に逢う人より無味で色が無い

それも最初から知ってたはずなのに

私の浅はかで無謀な試み

危うく手遅れになるところだった






 





自由詩 最初から知ってた Copyright 花野誉 2025-10-20 13:50:20
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