手紙
泡沫の僕
友よ。
君が家業のために帰郷して
随分久しいが、変わらず息災かい?
僕は昔、君とやっていたように、
言葉をひり出して空虚な自分を埋めようと
また足掻き始めたよ。
ただ、僕にはやはり季節の移ろいや陽の光、
風が運ぶ草いきれが理解、表現できないんだ。
君は朝夕に由良川に映る陽光を眺め、
山家城址に歴史と季節の移ろいを見るのだろう。
週末には明方から日本海にボオトを浮かべ、
のんびりと釣糸を垂らして、
「ああ、今年もひぐらしが鳴いてるね…」
なんて呟くんだろう?
こちらにあるのは年中煌めくネオンと
小便臭いゲロまみれの路地だ。
俺は酔っ払いの笑い声を聞いて
心の中で「くたばれ!」と
世界に呪詛を吐いている。
そうしたところで嘲笑は消えない。