日々、私を疑う
花野誉
今年に入って
私は私を疑うようになった
特に仕事においては常に疑っている
会計では、患者様二人ごとに金庫の中を総計算
取引先に出す伝票は、四度、五度、確かめる
それでも、まだ足りない気がする
さながら名探偵ポアロのごとく仕事をする
周りは言う
「きっちりしてるね」
「几帳面やね」
でも、自分ではそうは思わない
臆病な私が
自分を疑った結果がそうなっている
そうしないと、後で〝大変〟が押し寄せる
疑うようになったきっかけは
夫からの静かな指摘
──まさか、私がそんなに〝ぼんやりさん〟だったとは
残念さと新鮮さを同時に覚えた
自分で自分を執念深く疑うのは、少し疲れる
けれど、自分を真剣に見つめるので
色々なことが鮮やかになり、輪郭がはっきりしてきた
時には薄い靄の向こうまでも見える
私がしてきたことの側面にあった別の景色
操縦しきれなかった自分
浮かぶ過ぎた人たち
まるで走馬燈のようにぐるぐる回り
宙にひきこまれそうになる
そして明日も、私は私を疑う
疑ってかかるくらいが、丁度いい
疑いは、私を支え、私を守ってくれる