灯火
りつ

月の無い夜は
私が月の代わりになる
嵐の夜は
たった一つの光を灯し続けるから
あなたは安全だ

 ((寒い?
 ((もっと近く
 (冬の香りがするよ
 (まだやっと秋だ

素数と素数を足したり引いたり掛けたり割ったり
それで丁度割り切れる整数ができたら
素敵じゃない?

そう笑いながら
きみはワルツのステップを踏む

ワルツしか踊れないの
パパがワルツしか教えてくれなかったから

1・2・3 , 2・2・3

パパと踊るのが夢だったわ
死んじゃったけど

でたらめな(でもどこか懐かしい)曲を口ずさみながら
きみの足取りは軽い

 ((ほら、岩場を避けて
 (大丈夫
 (あなたは安全

はじめからかなうはずもなかった

月の無い夜は
私が月の代わりになる
嵐の夜は
たった一つの光を灯し続けるから

ともにともす
(共に踊る)
あなたが私の、たったひとつの《灯火》である限り


自由詩 灯火 Copyright りつ 2025-10-06 20:33:03
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