コオロギの誘い
花野誉
夜のベランダ
洗濯物を干していたら
一匹のコオロギが鳴き出した
リリリ リリリ
耳澄まし聞き惚れる
まるで私を誘うよう
少し移動するたびに鳴く
─暗闇で見間違えね
─私は若くないですよ
それでも
コオロギの声に心ときめかせ
勝手な思い込みと共に眠りにつき
二つ夢をみた
肉体は若く
若い女性達とグラウンドを駆け巡る
圧倒的な一位でゴール
肉体は現状のまま
金髪の若いアメリカ兵にナンパされる
──アメリカ人は許容範囲が広いんだな
感心しつつ誘いにのる
そんな若やいだ楽しい夢をみた
コオロギ君のおかげである
感謝