父と娘    蒼風薫
梅昆布茶2

ミモザの美しい頃に
父さんと手を繋いで
理由も知らず
バス停まで歩いたことは

覚えてるわけもない
わたしは二歳

父さんのの掌はきっと
わたしの小さな手に
この世で他には見つけられない
ぴったりサイズの温もりだったはず

この二つのパズルのピースはだけど
この時が永訣の春と
なったかもしれなくて
二歳は
どう思っていただろう
いつものように路傍の営みに気をとられ
温もりの意味も知らず
自分が人間だってことも知らずに
そして理由を
全く知らずに
知らないままバス停につき
そこには父娘としての終着駅から終着駅への
レールが敷かれた起点があるはずでもあった

二つの大きさの違うピースは
その日少しの間だけ別れ
大きい方がおばあちゃんに
電話で何かを頼んで断られ
ピースjはまたくっついた


『離婚するから子供を頼む』
『それでは子供がかわいそうだ』

父さんは
今は骨です
父さんは父さんでした
父さんのわたしは子供だから
あの日のピースは
最初っからいつかは別れるのだけれども










自由詩 父と娘    蒼風薫 Copyright 梅昆布茶2 2025-09-30 14:04:31
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